常日頃、というか自分がデザインという行為をおこなっていく中で、人間の脳との関わりを考える事がよくあります。「何か」を脳が認識するというプロセスは、デザインという行為の中でどういう影響を及ぼすのかということです。
例えば、今年の弊社の年賀状では、虎と判断できる要素を削っていきながら、どこまでそれが許されるのかという実験を行いました。
その時、ふと考えました。
世の中にある虎を模したキャラクターやイラストは、テレビや動物園で実際に見る虎とはだいぶ違うはずなのに、なぜ虎と認識できるのか。
子供の頃に、本物の虎と並行してイラストやキャラクターとしての虎を見せられ、それはイコールなんだよ、って教えられてきたんだと思います。実際、自分の子供に教えるときもそうだった。その中で、実物と虚像との共通点を脳が見つけ出し、黄色と黒のシマシマの大きな生き物=虎という図式を作り上げてきたんだと思います。
脳科学は全くわからないし、詳しい理論もよく分かりませんが、あくまでデザイナーとしての自分自身の見解としては、認識を形作る上で、色・形の他に、その「割合」と「配置」というのが大きな意味を持っているのではないかと思っています。
下の図形群の上段は某国民的アニメのキャラクターの色、下段はパトカーの色を抽出したものです。
上段の方は、形と色とその大きさ、配置を色々変えています。下段の方は色の位置・割合をいじっています。表皮・鼻・鈴の色、位置、そしてその形や色の占める割合。赤色灯や車体の色、位置、割合。ただ色や形を組み合わせるのではなく、位置や割合が重要です。
人間の脳は何かを見た時、目の前のものと色んな要素が合致しているような「似たようなもの」を記憶の中から探り出し、照合し、足りない部分を自らの記憶に基づいて補完するようにできているんですね。便利な半面、見間違いや勘違いも、こうやって起こるんでしょう。
いすれにしても、デザインという行為の中では大事な考え方だと思います。